スキルと人格、どちらがこれからの世の中で求められるようになるか

スキルと人格、どちらがこれからの世の中で求められるようになるか

ビジネスパーソンとして仕事をする中で、誰しもが「スキル」を磨こうと努力しています。

スキルを磨くことで、他の人よりもアウトプットを出すことが出来るようになり、それが自らの評価に繋がるからです。

一方で、多くのマネジメント論、経営戦略、組織論の中では「人格こそが最も重要だ」という意見が数十年前から出てきています。

はたしてこれからの世の中では「スキルと人格」どちらが求められるようになるのでしょうか?

 

「人格が良い」とは何か

スキルに比べて「人格が良いこと」は定義がしにくいものです。

私が思う、日本における「人格の良さ」として定義される性質は、以下のような性質だと思います。

  • 他人に嫉妬しない
  • 他人を馬鹿にしない
  • 自分の不機嫌やモチベーション低下を周りに撒き散らさない
  • 自分のことだけを考えるのではなく、全体のことを考えて行動、発言出来る人
  • 他人を褒める人
  • 他人の成功を祝福し、自分の参考に出来る人
  • 他チーム・他人の批評をしない
  • 「◯◯は◯◯と言ってますよ!」と社内政治をしない
  • 話題の中心が、物事や、自分が好きなものであること
  • 他人の話をじっくり聞ける人
  • 他人をいじって笑いを取らない
  • 自分のことをいじって笑いを取れる人
  • フィードバックを素直に受け入れられる人
  • 感情で物事を判断しない
  • 感情で物事を推し進めない
  • 感情の下がり幅が少ない
  • 何かが足りない状況で、なぜ?を追求し、自分に何が出来るか考え、改善に向けて自ら動き出せる人
  • 何かが足りない状況でも、周りを鼓舞出来る人
  • 何かが上手く行かないとき、誰かのせいにしない
  • 飲み会で愚痴を撒き散らさない
  • ポジティブな人
  • 周りに元気を与える人
  • 周りの人から「この人と一緒に働けて誇らしい」と思われる人

日本は嫉妬の社会と言います。

他者に対して、自分よりも恵まれているという嫉妬、たまたまその地位を獲得したという嫉妬がつきまといます。

連日のニュースを見ていても、それは明らかだと言えます。

日本特有の「嫉妬」に飲み込まれない人こそ、人格が良いと言えるのではないでしょうか。

 

これからの世の中で求められるもの

これからの世の中は、どんな世の中になっていくのでしょうか?

確実なのは、どんどん変化のスピードが早くなっていくということです。

企業の平均存続期間は確実に短くなっています。

大企業であっても安心とは言えず、日本にもアメリカのようにベンチャー企業の数が増えることが予想されます。

言い換えれば「エキサイティングだが不安定で、足りないものが多いことが当たり前の世の中」になっていくと言えます。

伝説の起業家でもあり、著名ベンチャーキャピタリストであるマーク・アンドリーセンはベンチャーについて下記のように言っています。

「起業するってことは、君たちがこれまで経験したことがないような人生のジェットコースターに乗るようなものだ。ある日、自分は世界を征服できるんじゃないかと思うこともあれば、その数週間後には、自分の事業は破滅するんじゃないかと感じることもある・・・事業が先に進むにつれて、こんな気持ちの変化が何度も何度も繰り返される・・・それが自分の感情やその時のプレッシャーによって増幅されて、ジェットコースターに乗っているような気持ちになるってわけだ」

「エキサイティングだが不安定で、足りないものが多いことが当たり前の世の中」になると、自分が持っているスキルを発揮するのと共に、今の環境をポジティブに捉え、自ら行動することが何よりも大事になります。

新しいプロジェクトはそもそも正解が分からないため、今ある手がかりの中で、失敗しながらもどんどん行動していくことが必要だからです。

足りないものや前職との違いに愚痴を言っていたら、それだけで1日が終わってしまいます。いくらスキルがあっても、パフォーマンスが出ないため、評価はされないでしょう。

また変化のスピードが早くなると、アメリカのようにプロジェクト単位でタッグを組んだり、チーム編成を組むような世の中になっていくことが予想されます。

チーム編成が頻繁に変わるようになると、何よりも重視されるのは「信頼出来るかどうか」という点です。

苦しい環境でも周りを鼓舞してくれるメンバー、自律的に行動してくれるメンバーはマネージャーにとって本当にありがたく、信頼に足るメンバーです。

一方、スキルがあっても、いつも誰かや会社の悪口を言って溜飲を下げているメンバーは社内の雰囲気を悪くし、周りの士気やモラルを下げるため、信頼出来ません。

嫉妬心が強いメンバーはマネジメントコストが異常に高い上、「目指す水準ではなく一番低い基準」を元に話をするので、プロジェクトが前に進まなくなります。

プロジェクトのスピードが早い場合、徹底的に問題点を議論し、解決策を見つけ、スピーディーに施策を実行し、PDCAを回していくことが必要になります。

人格が良い人同士であれば、お互いに信頼関係が生まれているため、徹底的に議論をすることが出来ます。「誰々が悪い!ではなく、なぜそうなっているのか?」という思想が根付いているので、フラットに、真摯にディスカッションすることが出来ます。

しかし信頼に足らないメンバーが入っていると「この人はまたどこかで不平不満を巻き散らかすのではないか」という腫れ物に触るような懸念が出てくるので、率直なディスカッションが出来ず、問題点の議論が中途半端になります。

 

人格は必須条件

上記のような理由から、人格はこれからの世の中における必須条件だと言うことが出来ます。

一方で、スキルは人格と組み合わせることで、その価値を増幅させます。

人格だけが優れていても、スキルが無く、アウトプットが出なければ評価はされません。

またスキルは磨けば磨いた分だけ身につけることが出来、アウトプットの品質も数十倍にすることが出来ます。

 

一方、人格は身につけるのが難しいと言えます。

その人自身の性質に迫るものだからです。

人格を磨く努力は地味で、短期間で身につけることは難しいものと言えます。

人格は必須条件ですが、何十倍もレバレッジが効くものでもありません。

 

マネージャーには特に人格が求められる

マネージャーには人格が必須条件だと言えます。

マネージャーの行動や思想は、恐ろしいまでにチームに伝播します。

「発言」ではなく「一挙手一投足の行動」「思想」が伝播するのです。

人格が良い人がマネージャーであれば、そのチームの人格は良くなるでしょう。

逆に、どんなにスキルがあったとしても、人格が良くない人がマネージャーになると、誰かがいつも誰かの悪口を言って溜飲を下げている集団になってしまい、会社に未来はありません。

マネージャーになるためには、人格は必須だと言えます。

不平不満を言うのではなく、問題解決に責任を持ち、効果的な施策をスピーディーに実行出来る人、そして社内の文化とモラルに良い影響を与える人がマネージャーになるべきです。

どんなにスキルがあったとしても、人格が悪い人材はマネージャーにはなれません。

 

嫉妬や承認欲求は身を滅ぼす

嫉妬や承認欲求というのは、とても怖いものだと思います。

嫉妬や承認欲求は、決して満たされず、幸せになることが出来ません。

そしてこの世の中は、需要と供給で全てが決まります。

過去どんなに評価されていたことや、どんなに頑張ったことであっても、需要が少なくなり、供給が多くなれば、評価は相対的に低くなります。

ビジネスパーソンとして、需要と供給を敏感に感じ取り、自らを変化させていくことが必須ですが、嫉妬や承認欲求は「需要と供給」を曇らせ、決して誰も幸せにならない方向に我々を導きます

需要と供給からは、誰であっても逃れることは出来ません。

需要と供給に、対応して変化するしかないのです。

嫉妬や承認欲求は、変化への歯止めをかけるもの。

変化出来ない存在は、恐竜と同じ末路をたどることになってしまいます。